10年前、そして、10年後

 本日はピタパタ第4回公演「痕-KON-」にご来場いただき、まことにありがとうございます。
 本作は第26回(平成15年度)文化庁舞台芸術創作奨励賞特別賞を受賞した作品です。初演は日本劇団協議会主催創作奨励公演として劇団青年座により製作されました。
 早いもので受賞から10年が経ちました。
 このたびの上演にあたり大幅に加筆修正しました。なので、“再演”というよりも、10年前の自分と“共作”した気分です。書きながら否応なしにこの10年間を振り返り、またやはり10年後には、こんなふうに「今」を振り返ったりするのだろうかと、未来の自分の姿に思いを馳せては、軽くめまいを覚えるのでした。


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 ときどき劇作家としてのルーツを聞かれることがあるのですが、直接影響を受けた作家が思い当たりません。が、あえていうなら、私が学生時代に流行した“ミニマリズム”と呼ばれる作風の小説に、自作の手触りを求めているのかも知れないな、と最近になって思うのです。
 当時、私は、いわゆるアングラの役者をしながら、読んでる小説はもっぱら、この手のものでした。
  ミニマリズムの代表格であるレイモンド・カーヴァーの名は、今や国民的作家となった村上春樹氏の翻訳により、たちまち学生たちの間に広く知れ渡りました。
 ズバリ、『ノルウェイの森』世代の私。
 同様の経験をした演劇人て、実は意外と多いのではないでしょうか。 
 その後の、いわゆる「静かな演劇」ブームが私たちの世代にさしたる抵抗感もなく受け入れられ、一般化したのはこのためだ、というのが、私の立てた仮説なのですが…どうでしょう?


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 20代の終わりに演じ手から書き手へと転向し、この「痕-KON-」でようやく“自分の文体”と呼べるものを確立できた気がしています。
 その後の作品で、作風を同じくするにせよ変えるにせよ、この戯曲を“基準”にして自分の中で距離を測っていたように思います。
 そういう意味で、「痕-KON-」は私の劇作家としての“出発点”となった作品です。
 
 まもなく開演いたします。
 どうぞ最後までくつろいでご覧ください。

ピタパタ代表 今井一隆

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